小浜島6  Bob's Cafe | malle店主の話

小浜島6  Bob's Cafe

Bob's Cafe は

小浜島の港そばにある実在するCafeです。

登場する方々も実在します。

勝手に人間観察して勝手に妄想したことを

書くので失礼があると思いますがご容赦下さい。


美味しくて良いお店です。お薦めします。



~Bob's Cafe~


前日の山登りのせいで足が筋肉痛だ。

10時半の宿と港を往復する送迎バスに乗り込む。

11時オープンのBob's Cafeでランチをとるためだ。

この日も日差しが強く日向にいると焦げる。


小浜島の港に到着してまず目にするお店。

それがBob's Cafeだ。宿泊している間

一度は入ってみたかったお店である。

何よりボブのカフェって名が心をくすぐる。


「ボブってどんな人だろう?外人かなぁ?」


ネーミングからはアメリカ人しか想像できない。

離島の波止場でちょっとやさぐれたアメリカ人ボブが

営むカフェというよりは酒場を想像する。


バスが港に着く。

オープンまで少し時間があった。

船着場の待合室からオープン前のBob's Cafeを観察する。

プレハブのような2階建ての建物。

一階はレンタカー屋か何かが入っている。

Bob's Cafeはその上の2階にある。


入り口も開いてるし人もいるようなので

時間どおりに営業しそうだ。

小浜バーガーが売りなのだろうか。

店先に旗がなびく。


malle店主の話-小浜47

11時、時間だ。

向かおうとする我々の前に

旅行者と思われる若者の集団が先に

Bob's Cafeに突入しそうだ。


「絶対ボブに行くよ、あいつら」


すっかりボブ呼ばわりだ。

我々も彼らの後について行く。


建物のむきだしの階段を登る彼ら。

最後尾の我々を含め行列のようになる。

しかしそこからいっこうに進まない。

遂には先頭の彼が引き返してきた。


「なんだよ、エアコン故障だって。修理するから

 30分遅れるんだって。別にエアコン効いてなくても

 いいのに。ってエアコン30分で直るのかよ」


彼らは少し怒っていた。


「でたっ!!遅刻の口実だろ。俺ならもうちょっと

 うまい嘘つくけど」


遅刻魔の私はつい自分と照らし合わせ邪推なことを

考えててしまう。

でも冷静に考えると店を開けてすぐにこの団体の

お客を帰すだろうか?準備ができてなくても

ここはお客を確保するべきではないか。

例えエアコンが壊れていたとしてもだ。

商売っ気がないのか、それともこのお客がなくても

楽勝なくらい日夜繁盛しているのか今の段階では

わからない。


我々は彼らの小言を参考にし30分待って再び

チャレンジすることにした。


そろそろ30分経つ。

我々より先に女の人が入店。

大丈夫、オープンしたらしい。


我々も後を追って入店。

遂に足を踏み入れる。

アーリーアメリカンなカウンター周り、

場末の食堂のようなホール、

まさに日米合作だ。


カウンターの中には我々よりも少し年上に

見えるお姉さんがいた。

先に来たお客の女性を相手している。


「ボブは何処だ?こんなに早くからいないよな。

 きっとあのお姉さんは ボブの内縁の妻に違いない。

 やさぐれたボブの変わりに昼は彼女が

 店を切り盛りしているのでは・・・」


勝手に妄想が膨らむ。


そしてテーブル席に座る。が暑い。

サウナのように暑い。

エアコンには故障中の張り紙が・・・・。

故障は本当だったのだ。

しかし修理して遅れたわけではなさそうである。

お姉さんが修理するとは思えないし

業者が来ていた様子もない。


では何故オープンを遅らせたのだろう??

お姉さんの存在感は店にマッチしている。

そして作業がこ慣れている。

愛想は良いとはいえないが手際を見る限り

少々の混雑など楽勝でさばけそうなのだが。


「いらっしゃいませ」


お姉さんが水とメニューを運んで来た。


「小浜バーガーのセット2つと、

 ビールとマンゴージュース」


オーダーをとるとお姉さんはさっさと

カウンター内に戻った。

カウンター内は厨房を兼ねている。

この灼熱の店内でカウンター内の火作業は

過酷を極めるであろう。

しかしお姉さんはカウンターの女性を相手に

しながら淡々と作業をしている。


カウンターの女性は常連らしい。

仕事の途中のランチらしいが既にビールを

飲んでいる。この土地の性なのか店の性なのか

わからないが昼ビールに違和感がない。


我々は自然と彼女達の会話に耳を澄ます。

お客の女性の声が大きいのは都合良い。


どうやらここは小浜島に働きに来ている人達が

夜な夜な集うコミュニティーの場になっているようだ。


しばらくするとそこに見覚えのある顔がやってきた。


「あっ!あれは・・・」


つなぎを着た可愛いお嬢さん。

我々に「サイクロン」と「ハチろく」君を貸してくれた

宿のレンタル屋のお嬢さんだ。


とても愛想もよくて可愛い。

とても親切で可愛い。

左手薬指に指輪をしていたけど可愛い。


お嬢さんも我々に気づいて軽く会釈をしてくれた。

なんだかばつが悪そうだ。


やはりお嬢さんも常連らしくカウンターの女性と合流。

待ち合わせていたわけでもないが常連にありがちな

合流の仕方である。


「あ~××さん。お疲れ様です。ここいいですか?

 そうそう昨日あれからどこ行ったんですか?」


みたいな。

しかし小浜島に来てから方言をまったく聞くことがない。

この3人の会話もやはり方言ではない。


「みんないろんな理由でこの島に流れついたんだな」


何か辛いことがあってこの南国の小島にやってきて、

同じような境遇の人達とよりそうように生きているのでは。

と勝手にチープな妄想にふける。

実際はそんなことないだろうが。


妄想もひと段落していると

ちょっと恐持ての男性が入店。


「ボブ??!!」


金髪で今の島大輔似のこの日本人?は

無言のままカウンターに入り、仕事を始める。


社長出勤だ間違いない、この日本人?はボブであろう。

黙々と作業をこなす。

お姉さんと言葉を交わすこともない。

カウンターの女性達とも特に接触しない。

でもあたりまえのように作業をこなす。


パターンとしては片方が愛想ないと片方は愛想が

あるものだがBob's Cafeは二人とも愛想がない。

愛想がないというと聞こえは悪いが

対応が悪いわけではなく物静かなのだろう。

この淡々さは私は好きだ。うざさがない。

きっといろんな話を黙って聞いてくれるはずだ。

二人を求めて島に移住してきた若者達が

夜な夜な集うのであろう。などとまた妄想する。


「お待たせしました」


待ちに待った小浜バーガーだぁっ。


malle店主の話-小浜44

ほどよく焼いてあるがフワフワのバンズ。

大量のレタス。

目玉焼き。

柔らかだがしっかり味のついたパテ。

ちょっと高級でボリュームアップの月見バーガーだ。

味も良い。

なんといってもこの手のバーガーにしては安い!!

揚げ物つけても\700は非常に良い。

宿の食事が高いだけに物凄く安く感じてしう。

あっという間完食。


その間にお客が次々と来店。

店内の温度はさらにアップしていく。

しかし誰もエアコンの故障には触れない。

むしろこれがあたりまえのような錯覚に陥る。


もうちょっと粘りたかったが席も埋まってきたし

何よりもこの暑さに耐え切れず店を出ることに。


「お会計お願いします」


応対したのはボブだった。


「¥2000です」


味気ないやりとりだったが店も混雑していたし

淡々とした応対がかえって心地よい。

何よりボブの肉声を聞けたのが嬉しい。

やはり日本人であろう。

日本語が上手い東洋人とか日系かもしれないが。


では何故ボブなのか・・・。

彼は日系アメリカ人なのか?

もともとボブという人がやっていたこのお店を

この夫婦が継いだのか?

いや夫婦かどうかもわからないか。


知りたい・・・


「いつか再び訪れることがあるのであれば聞いてみよう」


と心に誓い店を出た。

名残惜しく振り返り写真を撮る。

malle店主の話-小浜46

波止場の酒場的な哀愁ある店がまえ。

いろんな思いが交差し妄想をかき立てる

空間がそこにある。



隣の建物を見ると

お土産物屋のような、喫茶店のようなところで

先程の若者集団がお茶をしていた。


「君達、後でもう一度Bob's Cafeへお行きなさい」


                     

その日は宿に帰ってほぼ何もしなかった。